Gazeuse! ピエール・モルレーンズ・ゴング (1977)
1) Expresso(P.Moerlen) いきなり冒頭よりホールズワースのギターが炸裂!ゴングという軒下から上がり込んで、結局は母屋を乗っ取らんばかりの弾きまくりだが、打楽器軍団も負けじと健闘して、凄まじい演奏となり、更にこの曲をいいモノにしています。「音のせめぎ合い」のシャワーを浴びる様です。 2) Night Illusion(A.Holdsworth) ホールズワース作曲で、ギター・リフはロックっぽいがジャズの香りが混在した不可思議さを醸し出しています。ソフトマシーンの「収束」みたいに新参者のバックバンドになるまい、という他のメンバーの意地との戦いが垣間見られて全体の輪郭がふやけそうですが、その浮遊感が魅力な曲なのかも?
3) Percolations Part 1(P.Moerlen) 三曲目で打って変わって、南洋の森に迷い込んだような静けさが訪れます。後ろの方で聴こえるヴァイオリンは子供の頃弾いていた、というホールズワースの演奏。前作Shamalでもみられたエキゾチックでオリエンタルな世界がここにも再現されています。 4) Percolations Part 2(P.Moerlen) 前曲から連続演奏されるのはモルレーン兄弟とバウワーによる、打楽器合奏曲。パート1にインスパイアされて即興的にプレイしていったものにピエールがオーヴァーダヴを施したものかもしれません。後半はピエールの、あのこぶしの効いたドラムソロに引き継がれ、ファンはニヤリ!
5) Shadow Of (A.Holdsworth) 明らかにホールズワースのフレーズが色濃い(作曲も彼自身)演奏となっていて、途中からのフルートソロも聴きモノ。中途で一旦終わり、更に第二章とも呼ぶべき展開が待っており、生ギターも凄まじいホールズワースの引き出しのジャグジーが噴射される様は心を癒されます。
6)
Esnuria(P.Moerlen) 本アルバムではバンドとしてのアンサンブルが最も素晴らしい出来の曲がコレ。全員が対等のポジションに立ち、細かいアレンジもよく練られています。楽器同士で会話が出来ている音楽は聴くのも楽しく、おそらく録音が済んだら、万歳!やったぜ!と一同叫んだに違いない、と想像します。
7)
Mireille(F.Moze) 録音の為に用意されたバンドの楽曲、というよりベースのフランシスがスタジオのピアノを弾きながらアランが生ギターで合わせたセッションがいい雰囲気だった、のでラストに追加した小曲といったところでしょうか。紅一点メンバーのミレイユ・バウワーに捧げられています。
アメリカではExpressoというタイトルで発売。(だから次のアルバムがExpresso 2というわけですね。)メンバーがガラリと入れ替わり、打楽器奏者が4人もいる画期的なバンドは世界中でもあまり例がないでしょう。リーダーのピエールはドラムを中心に、実弟のベノワがヴァイヴ担当、更にストラスブール音楽学校の学友ミレイユもマリンバやヴァイヴ、鉄琴など鍵盤打楽器でサポート。ラテン・パーカッションを担当するミノ・シネリはその後マイルス・デイビス・バンドや矢野顕子との活動など数多くのセッションに参加してブレイクします。
アラン・ホールズワースはこの録音の時点ではジャズレーベルCTIとの契約が残っていたのですが、ゲスト扱いでありながら、事実上主役級の演奏で大活躍しまくってます。本家ゴングの御大、デヴィッド・アレンがある時受けたインタヴューで、幾つもの枝分かれした分家のゴング・バンドたちについて尋ねられ、ピエールのグループを「あれはアラン・ホールズワースがやってるバンドだ」と答えたそうです。ある意味で正しい、というかホールズワースはこの後も何度となくピエールのゴング、そしてゴングジラに貢献します。
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